第310章

藤原邦達が脱獄できたのは、伊達じゃない。あれだけの芸当をやってのけた男だ。多少なりとも使い道があるからこそ、羽澤亜もわざわざ藤原邦達に声をかけたのだろう。

指名手配犯に、将来もへったくれもない。

だが――藤原邦達が、そう簡単に人の手駒になるか?

今ある「使い道」なんて、せいぜいそれだけ。ならばなおさら、ただで利用される気はない。

藤原邦達は言った。

「手は全部打ってある。お前は人数を――数十人、貸してくれりゃいい。天瀬姫奈は必ず助け出す」

羽澤亜は疑い深い目で藤原邦達を一瞥し、少し考えてから口を開いた。

「……いいだろう」

誰にだって弱みはある。羽澤亜の視線が、島宮健太へと落...

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